JOURNAL du Mini-z & ★☆M

ミニッツカップファイナリストの備忘録ブログ。

ホイールオフセットとスクラブラジアス

スクラブラジアス(スクラブ半径)とは、前輪のタイヤ接地面まで伸ばした仮想キングピン位置と、タイヤの接地中心との距離を言います。タイヤの接地中心が仮想キングピン位置より外側の場合はポジティヴ、内側の場合はネガティヴ、同じ場合はゼロスクラブと表現します。スクラブラジアスはブレーキング時のタイヤのトーイン・トーアウト、ロールセンターの変化、走行安定性やキックバック(これはクルマに乗らないで操作するRCではハンドルからのフィーリングとして感じることはできませんが、サーボ・サーボギアへの負荷は変化していますし、大きい場合は挙動としてあられます)など、さまざまな要素に影響があります。そんなスクラブラジアスの影響を以下に見てゆくことにします。

スクラブラジアスがおよぼすブレーキング時の影響

クルマが止まろうとするとき、接地面との抵抗を受け止まろうとするタイヤの力がサスアームを通してシャシーへ伝わります。そのとき、アームは前へ行こうとするシャシーと、止まろうとするタイヤとの間で変形し(実車の場合はブッシュもその役目を大きく担っています)、結果、アームは後方へずれることになります。スクラブラジアスがポジティヴの場合、キングピンよりも外側にあるタイヤ中心点からの力を受け、タイヤはトーアウト方向に向いてしまいます。これにより、アクセルオフ・ブレーキング時の安定感が失われることになります。こうした弊害を避けるため、クルマはタイロッドに前進角を持たせ変形時にもトーイン方向へタイヤを向けさせるようにしたり、ホイールオフセットを調整してスクラブラジアスを小さくするように設計されていたりします。ミニッツの場合はディフォルトでタイロッド0°、ホイールオフセットはボディによってディメンションが異なります。また、アッパーアームのディメンション変化を抑制するパーツ(フロントアッパーアームブレース)が用意されています。

走行安定性とコーナリング性能

スクラブラジアスは0(ゼロスクラブ)のとき、走行安定性がもっとも優れた状態になります。また、若干のポジティブスクラブ(キングピンよりもタイヤの中心点が外側)のとき、もっともコーナリングに優れた状態になります。この若干という数値は、実車でも数ミリという単位です。またちょっとしたキャスター変化によってステアリングの流れを起こします。

実車の場合、現代の標準的な技術ではスクラブラジアスは0〜15mmくらいに設定するのがハンドリングやステアフィールの面で好ましいと考えられているようです。ミニッツの場合MR-03のホイールオフセット±0の状態で7mm、実車のスケールにすると189mmになります。これはスクラブラジアスが50mほど取られることもあったパワステのない時代クルマと比較しても大きな数値です。

ミニッツの構造上、スクラブラジアスは実車よりもかなり大きく取られています。つまり曲がらないクルマであり、不安定なクルマだということです。スクラブ半径の適正値に近いフロントジオメトリを作ろうとするならば、フロントオフセットを出すことにメリットはないということになります(もちろん、それぞれの事象への対応策があれば別です)。

これらのことを考えると、フロントホイールオフセットはなるべく小さく、リヤは大きく取る方がよい(後輪側重量の重いミニッツには、リヤトレッドの確保が必要)はずです。単純にトレッドだけを考えれば、ランボルギーニディアブロやムルシエラゴが当てはまります。実際にこれらのクルマが使われない理由は、ボディ重量や前後重量のバランスやオーバーハングによる特性があるのかと思います。スクラブラジアスだけを見れば、フロントホイールオフセットはできるだけ小さいほうがよいという結果になりますが、それだけがクルマの走行性能やフィーリングを決定するわけではありません。スケールスピードが実車よりも格段に速いミニッツの場合、とりあえずトレッド確保が最重要、と考えることも然り。ですが、一般的に「走る」と言われるボディでなくても、ジオメトリを見直すことで、ある程度のポテンシャルを引き出すことができたり、自分のドライビングに合わせたクルマ作りができるはずです。

クルマ(ボディ)によって諸々のバランスがあり、同じシャシーでも、載せるボディによって考え方が異なり、そこに求める性能も変わってくる、一概に正解を出せないところもミニッツの面白いところです。