JOURNAL du Mini-z & ★☆M

ミニッツカップファイナリストの備忘録ブログ。

ボディの経年変化

VEノーマル(赤モーター・赤缶)が発売になって、リヤトラクションの確保が難しいFerrari Enzoや787Bから2LホイールベースはFearrari 458 GT2に、3LホイールベースはSauber C9へ乗り換える方が多くなって久しい今日ですが、こだわりを持ってボディを選んでいる方ももちろんおられます。自身、GTクラスではずっとMcLaren F1 LM(Short Tail)を使用してきました。VEになってからMcLaren F1 LMのポテンシャルを超えるほどのスピードになってしまい787Bを用意したのですが、かれこれ数年、ファイナルを除いてほぼ1枚のボディを使い続けてきました。常時バンパーを着けているのでフロントも割れることなく使ってこれたのですが、先日、右のダクトからウインドウにかけてクラックが入りました。ボディの着け外しのときにストレスのかかる場所なのですが、片側だけ柔らかくなってしまい挙動も微妙になってきそうなので、そろそろ新調する時期でしょうか。VEの発売から2年半、ボディを製作してから4年近く、ずいぶん頑張ってくれました。

ボディはABSという樹脂でできています。ABSは耐光性・耐衝撃性・耐薬品性に優れているうえに成形誤差が比較的小さく表面も美しく仕上がる、ボディに適した素材です。優れた素材ではありますが、どんな素材にも限界があります。物体が力学的応力を受けるたびに、弾性の範囲内では物体の形状はもとに戻りますが、原子レベルではもとに戻りきれないものがあり(非弾性的振る舞い)、それが蓄積されるとクラックが生じたりするなど、疲労破壊が発生します。ボディを使っていくと新品時よりもやわらかく感じるようになってきますが、これは各パーツの取り付けが甘くなる(接着強度など)だけでなく、ボディの樹脂が原子レベルで変化しているということです。原子レベルの変化を感じられるというのはすごい能力のような感じもしますが、ボディに関わらず、おそらく経年劣化や疲労による物質の変化や破壊はみなさんの日常にありふれていることだと思います。留めっぱなしだった輪ゴムを外そうとして切れて痛い思いをした、なんて、ありませんか?

非弾性的振る舞いは、物体の表層付近で起きることが多く、それが蓄積されていくと初期症状はクラック、その後それが広がり破壊へ進みます。今回できたクラックはこうした理由からなのです。

ボディを新品に載せ変えるとドライビングフィールが変わることがありますが、これはボディのこうした変化が招くものです。レースの時に新品ボディを、と思うこともよくありますが、できればレース前に同じ状態のボディを2枚用意して、1枚はきれいな状態でレースまで保管、もう1枚をセッティングに使用する、ときおり載せ変えてフィーリングが同じかどうか確認しながら進めるのがよいかと思います。ファイナル前にボディ塗ったんだけど、やっぱり前使ってたボディのほうがよかった、なんていう言葉、ほんとうによく聞きます。ボディにクラックが入るところまで使い倒した僕の787Bはどうなることやら。