JOURNAL du Mini-z & ★☆M

ミニッツカップファイナリストの備忘録ブログ。

セッティングは人それぞれ

写真はJSCCのシャシー。レースリザルトを上げるべく、セッティングも日々少しずつ変えています。僕がマシンに求めてきたものは、レースに勝てることと、そのために、どんな状況下でも自分が想定するマシンのスピードと挙動でラインを走ってくれること。これは非常に難しいことなので、辿り着いたようでそうでもなかったり、といった一進一退を繰り返してきましたし、現在進行形でもあります(それがRCを続けさせるおもしろさでもあります。)。それでもセッティングを続けていくことで理想に近づいていけることも事実です。セッティングとは、自分がどうしたいかをマシンに落とし込む作業です。ミニッツを楽しんでいるひとすべてが同じ目的を持っているわけでもありませんし、同じテクニックを持っているわけでもありません。ですので、みんなそれぞれの目的とテクニックとマシンのイメージに沿ったセッティングをするのが自然です。たとえエキスパートのマシンを手にしても、思うほど走ると思えなかったり、自分には合わないと思うこともあるでしょう。ほとんどのエキスパートのマシンはよく作り込まれていますが、それはそのエキスパート本人の目的や理想に特化されたセッティングになっているとも言えます。ですのでたとえエキスパートのマシンであっても、目的もテクニックも違う自分にマシンが合わないのは当然とも言えます(ただしエキスパートのマシンに多くの工夫・自身へのヒントが詰め込まれていることは間違いありません。)。そして、合わない・合わせられない自分はいつまでも下手でしかない、ということではありません。自分には自分にしかできないセッティングやドライビングがある、ということです。ちなみに、目標にしたり憧れるドライバーがいたとしても、自分の価値観や感覚・考え方やドライビングなど様々な要素によって、ほとんどの場合、自己流にしかなりません。自分を捨てる、というのは辛く大変な作業です。

セッティングとは、自分がどうしたいかを体現するための手段です。つまり目的が必要です。レースで勝ちたいのか、走りきれなくても(勝てなくても)ベストラップが出ることを目指すのか、楽しくドライヴできれば速くなくてもいいのか、など目的がないとセッティングはできません。まずは自分が何をしたいのかをはっきりさせる必要があるのです。その上で、その目的に近づけるパーツセレクトや調整をしていくことになります。ですので、ただオプションパーツを着けるだけの行為はセッティングとは言えません(着けるという作業をしただけ)。セッティングはバランスです。高価なパーツを着けたから、着けられるだけオプションパーツを着けたから理想のマシンになるわけではありません。また、セッティングを続けていくうちに、はじめの目的はさらに細かくなり「こういうコーナリングをしたい」「こういう加速感が欲しい」といったより具体的なものになり、セッティングもそれに合わせて細かく難しくなっていきます。そうなったとしても、大きな目的がはっきりしていれば道筋を外れずに進んでいけることになります。

ここからは自身がセッティングを行う際の実際のプロセスも含めての説明になります。

目的がはっきりしたら、ノーマル状態のマシンからセッティングを始めます。必ずそこをスタートにします。これは

・マシンの再現性があること
・パーツ供給の安定性があること

が理由です。スタート地点がいつも違うとゴールへの道筋もその都度変わってしまいます。これではセッティングをしようにも、戻れない道をただ進むだけになります。スタート地点に再現性のないマシンや供給不安定なパーツを組んだマシンを用意してしまうと、元に戻せなかったりパーツが破損した場合にスタートへ戻ることができなくなります。とにかくスタートとゴールはぶれてはいけないのです。また、誰かのセッティングから始める(お知り合いだったり、エキスパートの方の)、というのはあまりおすすめしません。なぜなら、その人と自分の目指すものが必ずしも同じとは限りませんし、仮に同じだったとしても、そのセッティングに辿り着くまでの試行錯誤がないというのは自身の引き出しを増やすことができなくなるからです。基礎のない上達はあり得ません。経験以上に身につく方法もありません。時間がかかっても、一歩一歩を確実に進めていくことをおすすめします。

そして、セッティングには以下のルールを設けます。

・パーツは必ずひとつずつ着ける・外す
・試すパーツ以外のコンディションは必ず同じにしておくこと
・理想とするマシンの挙動にならない場合にマシン以外に理由を求めない

上の2項目は、どちらもパーツがどんな変化をもたらすかを理解するためです。はじめのうちは豊富に用意されている様々なオプションパーツを試したくなりますし、もちろん一度、着けたいオプションパーツすべてを着けてドライヴしても構いません。ただ「速い」とか「上手い」とか「楽しい」に近づけるマシンになっていることはほぼあり得ません。パーツを理解することは、それぞれの相互関係によって成り立つマシンの最終形態をイメージするために不可欠なことです。

その上で、自身が望むマシンの挙動を示さなかった場合は、セッティングの変更を検討します。また、たまたま変な挙動になったのでは?と、そこから続けてドライヴしてみたりしたくなりますが、自分が理想としない挙動を示した場合は必ずマシンに何らかの原因があります(もちろん理由を理解するための更なるドライヴは必要です)。また、路面コンディションのせいにすることもよくありません。それは酩酊してふらふらと歩いている人が「酔っぱらっているのは地面だ」と言うようなものです。加えて、セッティングの際には、手で合わせるという考えは避けるべきです。セッティングはマシンの理想型を突き詰めていく作業なので、マシン以外に理由を求めてはいけないのです。

自分が思う通りの動きをしてくれるマシンであれば、どれだけドライヴしてもストレスを感じることなく走りつづけられます。最終的に求めていくのは、自分の理想を体現してくれるマシンです。勝ちたい人のマシンは勝ちたい人のマシンに、楽しみたい人のマシンは楽しいマシンになっていくでしょう。それぞれ目標や理想が近ければセッティングの方向性が似てくることもあります。その際はセッティングのノウハウを共有できたりするかもしれませんし、そういうドライバーのマシンであれば違和感をあまり感じずにドライヴできるかもしれません。

セッティングをする際には、まず自分が何をしたい(どうなりたい)のかをはっきりさせることをおすすめします。そして、それは「上手くなりたい」とか「速くなりたい」とか「楽しく走りたい」ではなく「どう上手い」のか「どう速い」のか「どう楽しく」なのか、つまり「レースで勝ちたい」「ミスをせずに走りたい」「ここからここまでドリフトで飛ばしたい」「友人と並走できるようになりたい」など具体的な目標を設定しましょう。具体的な目標=明確なゴールです。ゴールが見えないナビゲーションは誰にもできません。自分にとっても羅針盤にもなりますし、明確な目標を伝えることでサーキットオーナーやエキスパートの方から適切なアドバイスを受けることができるでしょう。それは自分に合うマシンに近づくための大切な要素です。ですが、アドバイスは答えではありません。自分に合うマシンを作れるかどうかは、前述のプロセスを繰り返すしかありません。それがセッティングという作業そのものです。時間のかかる作業ではありますが、その先には必ず自分らしいマシンが仕上がっているはずです。ゆっくり楽しめることをホビーの醍醐味だと捉えて、マシンとゆっくり向き合ってみるのもよいのではないでしょうか。