JOURNAL du Mini-z & ★☆M

ミニッツカップファイナリストの備忘録ブログ。

セッティングの考え方:置き換え

先日のミニッツミーティング in 車輪村でAメインを走ったJSCCのNSX-R。動きに癖があるとされ使用率の低いボディですが、Aメインを走れるくらいのマシンには仕立ててあげることができました。

「セッティングとは、車を思うように走らせることができるように調整すること。つまり、走る・曲がる・止まるという3つの要素を思うようにコントロールすることです。」と以前の記事で書いていますが、それを煮詰めていくと、多少個人差はあるものの行き着くマシンのイメージや仕上がりが近づいてきます。それは使用ボディや装着パーツの偏りなどに表れてきます。多くの人がファイナリストや優勝マシンのセッティングを気にするのも、前述の3要素を自在にコントロールできるマシンになっていると思うからでしょう。もちろんその通り、勝てるマシンはそれだけのポテンシャルを持っていると思いますが、だからといって自分がそれを操るドライバーと同等のテクニックを一緒に得られるわけではありません。仮に僕がF1マシンをドライヴできたとしても、セナやプロストアロンソシューマッハと同じテクニックやメンタルを持ったドライバーになれないのと同じです。

余談ですが、誰かのセッティングをコピーするときは、自分なりの味付けやセッティングシート記載以外のことをしてはいけません。それによってバランスが崩れるからです。完全にコピーしたマシンのセッティングが合わないと感じるときは、ドライバーのテクニックや感覚の差によるものです。これはどんなエキスパートでも同じように感じることがあります。違和感の原因は何か、自分との違いとは何か、そこを突き詰めることで自分が求めるドライビングとそれに応えてくれるマシンが見えてくるので、それが分かるまでは完全にコピーしたマシンと向き合い続けることをおすすめします。

さて、ようやく本題です。

セッティングはクルマを思うように走らせられるようにすることなので、ここから先は、そのイメージやテクニックがあることを前提にします。ミニッツカップで勝ちたい、とか、誰よりも速い、とかいう漠然としたものではなく、自分が描くラインに乗せられるマシンなのかどうか、そのラインで設定した目標タイムへ到達できるか、ミスなく走りつづけられるか、走り続けられるとしたらそれは何周・何分できることがレースに必要か、といった明確なイメージや目標、それが可能なテクニックが必要です。それがない場合はノーマルを基本にしたスタンダードなマシンか、どうしても近づきたいと思うドライバーのマシンの完全コピーのマシンで練習することをおすすめします。

仮に、マシンがコーナリングの際、初期はあるのにアンダーステア過ぎて膨らんでしまい、思うラインを走れないとします。この場合に何をするでしょうか。

・プロポのトラベル・ステアリングカーブで調整
キャンバーナックルを入れる
・タイヤのテーパーを強くする
・ナックル上のシムを増やしコーナリング中のキャンバー変化量を増やす
フリクションダンパーを緩くしてロールを増やす
・サスプレートを柔らかくする

どれが正解でしょうか。場合によりますが、どれも正解になる可能性があります。それはそのドライバーが何をどう変更してバランスをとるかによるからです。こうして思いつく答えは人によって異なってきますし、それが複合してマシンはバランスを保っているわけです。ただし、カテゴリによってはプロポや使用パーツが指定されていたり制限されていたりする場合があるので、その場合は解決方法にも制約が課されることになりますし、プロポの設定値の限界を超える程度で症状の改善が必要な場合などには、セッティングの置き換えが必要になります。たとえば、曲がらないからトラベルを増やしたいと思ったときにプロポの設定値が限界だった場合、マシンのフロントスプリングを柔らかくして前加重にしやすくする、ロールを増やすことで曲がりやすくする、とか、トーやキャンバーの変更で曲がりやすくする、など物理的なセッティングで不足分を補うことになります。また、セッティングの嗜好の問題になる部分でもありますが、プロポ設定をできるだけディフォルトに近づけておきたい、などという考え方の場合、ステアリングカーブの設定値をキャンバーキャンバー変化量、タイヤテーバー角などでセッティングし直す、などの場合もあります。これを僕はセッティングの置き換えと表現しています。

置き換えをする場合、ある程度のノウハウが必要になります。たとえば、レース中にサスプレートが破損したとします。使っていたカーボンサスプレートはミディアム、同じものが手元になく代品としてFRPサスプレートソフト2枚を重ねて使う、といったようなことです。実際のバネ定数から言うと後者のほうがやわらかくなる計算なのですが、重ねることでバネ定数が単純に2倍になるのではないこと、実走によるフィーリングなど、経験しないとできないことが多々あるからです。ただ、置き換える場合に完全に同じフィーリングを再現することができるわけではないので、微調整が必要になります。これを改めてパーツ変更で行うのか、プロポ設定で行うのか、ドライビングテクニックで補うのか、それがドライバーによって変わってくるので、最終的に出来上がるマシンはイメージが似通っていても多少なり個体差がでてくるのです。

僕のマシンもしくは僕そのものががよく変態だと言われますが、それはセッティングを置き換えることによって、使用率の低いパーツの使用やアイディアがマシンセッティングに落とし込まれているからだと思っています。簡単に言えば、わざわざそれをしなくても走るマシンは作れる、ということです。それを敢えて避けて置き換えに置き換えを重ねてマシンセッティングをしていくことが僕の趣味の楽しみ方だということだと自覚もしています。和音の作り方と似ている、と自分では思っています。

セッティングは置き換えができるものなので、プロポセットは嫌い、とか、キャンバーが嫌い、とか言うのではなく、まずやってみて引き出しを作って、ありとあらゆるセッティングパーツを組み合わせられるようになることは趣味をより楽しめる要素だと思います。そしてそんな引き出しの豊富なカズさんのようなレースに強いドライバーになれる要素のひとつだと思います。食事と一緒で、偏食せず、なんでもやってなんでも飲みこんで自分の血肉にしていく貪欲さがあってもいいかな、と思ってみたりします。

というわけで、変態セットな僕のマシン、コピーしてみませんか?笑。8000円でドライビングのレクチャーもしちゃいますよ笑(冗談です)。